シマノの公開特許出願のうち、海で分解されるルアーに関係するものを7件読みました。6件は生分解性の素材を使うルアーで、2025年4月から2026年4月に公開されています。どれも素材の置き換えだけでなく、強度、ロスト後の分解、パーツの留め方を構造で解こうとしています。
根掛かりでルアーをロストするたびに、「あれ、ずっと海の底に残るんだよな……」と気になったことはありませんか。
この記事では7件の中身を、釣り人目線で紹介します。読んだのは公開された公報で、製品の仕様を確かめたものではありません。
生分解ルアーの「3つの課題」
素材を生分解性樹脂に替えるだけなら簡単そうに見えます。ただ、公報の課題の欄を読むと、次のような問題が見えてきます。
- 使っている最中の強度:分解される素材なので、使い込むと弱くなる心配がある
- ロストしたあとの分解:丈夫に作るほど、分解に時間がかかる
- パーツの留め方:接着に頼らずに固定できないと、目玉などのパーツが落ちる
以下、この3つの課題に分けて紹介します。分け方は私の整理で、公報に書かれているものではありません。
課題1:使っている最中の強度をどう保つか
力がかかる所だけ「分解を遅らせる」(JP2025067517A、2025年4月公開)
ボディは中空の生分解性樹脂です。そのうえで、ライン・フック・羽根をつなぐ部分(力がかかる所)を厚くし、さらに分解を遅らせる部材で覆います。
ほかの部分には薄いところを設けて、分解までの期間を短くする狙いです。
「丈夫さ」と「分解の早さ」という矛盾を、場所で使い分けて解決する発想です。
「そろそろ限界」が見て分かる目印(JP2025067591A、2025年4月公開)
分解が進むと、ラインアイやフックの付け根が弱くなります。気づかずに使い続けると、大物が掛かった瞬間にバラシ……ということになりかねません。
そこで、ラインアイやフックの付け根に分解の進み具合を示す突起(インジケーター)を付け、使用限界を把握できるようにしています。
消耗品としての交換時期を釣り人に分かるようにするという考え方は、生分解ルアーならではだと思います。
課題2:ロストしたら、ちゃんと分解されるか
表面の「スジ」で分解を早める(JP2025115290A、2025年8月公開)
海洋生分解性樹脂で作ったボディの表面に、筋状の凸凹を付けます。公報の要約に理由までは書かれていませんが、水に触れる面積が増えるからだと思います。
いっぽうで、凸の先端は丸くするか角を鈍くしています。使っているあいだの性能を安定させるためとされています。
根掛かりしても「ボディは回収」(JP2025161539A、2025年10月公開)
傘針・ラインアイ・シンカーとボディの固定部分を、水中で分解される素材で作るという出願です。
課題には「根掛かりしたルアーのボディを回収できる」と書かれています。固定部分が分解されれば、ボディが外れて回収できるという狙いだと読みました。
傘針が出てくるので、エギのような形を想定していそうです。
課題3:パーツをどう留めるか
目玉を「はさんで」留める(JP2026031026A、2026年2月公開)
ボディを貫通する穴に筒状の部品を通し、左右の目玉でボディをはさみ込むように留めます。課題は、接着せずに外装部品を強く取り付けて、使用中の落下を抑えることです。
落ちた目玉がまた海に残ることを考えると、細かいようで大事な点だと思います。
リップも生分解素材に(JP2026065334A、2026年4月公開)
ボディとリップを別パーツにして、どちらも生分解性の材料で作ります。課題は、リップの透明性とボディの耐衝撃性を両立することです。
見た目と強度を落とさずに、リップ付きのルアーも生分解素材で作ろうという方向だと読みました。
傘針を接着剤なしで留める(JP2024157844A、2024年11月公開)
この1件だけは、生分解性の素材を使うルアーの出願ではありません。ルアーの傘針を、接着剤を使わずに軸に固定する構造です。軸の断面を角のある多角形にして、針と針のすき間を角に引っ掛けます。
課題に「傘針自体の環境負荷を低減」と書かれているので、関連する出願として入れました。
7件から見えること
- 2024年11月から2026年4月までの約1年半で7件です。単発のアイデアではなく、続けて取り組んでいるテーマに見えます
- 中身は素材の置き換えから一歩進んで、強度の保ち方・分解のさせ方・パーツの付け方・交換時期の見える化まで踏み込んでいます
- 羽根付き、リップ付き、傘針付きと、いろいろなタイプのルアーが出てきます
実際の製品の動き
出願だけの話ではありません。カネカは2026年6月23日、同社の生分解性バイオポリマー「Green Planet」がシマノのルアーに採用されたと発表しました。報道では、使用例として「Salvage Solid 70S」が挙げられています。カネカの発表には、操作性や繰り返しの使用に耐える耐久性などの品質を満たしたとあります。
ただ、発表で確認できたのは素材の採用までです。発売時期は確認できていません。この記事で紹介した構造がその製品に使われているかどうかも、分かりません。
注意点
紹介した内容は、すべて公開された時点の特許の「出願」です。今の審査の状況は確認していません。審査を経て権利になるとは限りませんし、そのまま製品になるとも限りません。分解の速さも、公報の要約からは分かりません。
参考にした情報
- KANEKA Biodegradable Polymer Green Planet Adopted for Shimano’s Fishing Lures(カネカ、2026年6月23日)
- MONOist の記事(2026年6月24日)
- 各公報の詳細は、番号から Google Patents や J-PlatPat で確認できます
※本記事は公開されている特許公報(要約)をもとにした個人的な読み解きです。内容の正確さや権利範囲を保証するものではありません。
特許の読み方は、タイラバネクタイの形の特許を調べた記事でも書いています。M.F.WORKSの検証記事はM.F.WORKSのカテゴリーにまとめています。タイラバネクタイとアシストフックは、ショップで販売しています。

