タイラバのネクタイを自作して販売しようと、特許庁のJ-PlatPatで調べてみたら、カーリー形ネクタイの「形」そのものに特許がありました。この記事では、調べ方の手順と、見つかった特許・実用新案の中身を、自作を考える釣り人の目線で紹介します。
タイラバを始めて5年になります。ふだんは大阪湾・明石周辺で、実家の山口に帰省したときは響灘や角島沖でも鯛ラバをしています(乗る船は毎回いろいろです)。

ある日、釣具屋に並んでいるネクタイを見ていて、ふと思いました。
「これ、自分でも作れるんじゃないか。オリジナルのネクタイが作れるんじゃないか」
ネクタイの形で釣果が変わるのは、実際に経験しています。二枚潮の日に0.5mm厚のWカーリーを使っていて反応がなかったのが、厚さ1mmで長めのシングルカーリーに替えたとたんに釣れ出したことがありました。形や厚みを自分で決められたら、もっと面白くなるはずです。(ネクタイの形や素材でなぜ釣果が変わるのかは、ネクタイ選びを流体力学から考えた記事にまとめています)

ネクタイを自作するなら、気になるのが「この形、作って大丈夫なの?」という点です。
そこで、作り始める前に特許庁のデータベースで調べることにしました。
この記事は、公開されている特許公報を私が読んで整理したものです。特定の商品が特許に当たるかどうかの判断ではありません。製品として作って売る場合は、弁理士など専門家に確認してください。
なぜ特許を調べたのか
自分で使うだけでなく、メルカリやminne、Creemaなどで販売して、ほかの釣り人とも共有したいと考えていました。
ただ、売るとなると話は別です。特許は「業として」作ったり売ったりする行為に効力があるので、個人でもネット販売すれば無関係ではありません。
調べ方:J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)
特許・実用新案・意匠は、特許庁の無料データベース J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で誰でも検索できます。

今回やったのは次の3つです。
- 特許・実用新案:「タイラバ」などの言葉と、「ネクタイ」「スカート」、さらに「カール」「湾曲」「螺旋」などの形を表す言葉を組み合わせて全文検索 → 32件
- 意匠(デザイン):物品名「ネクタイ」「スカート」「テール」などで、釣具の分類に絞って検索 → 6件
- 気になった番号は、請求項(権利の範囲を書いた文章)と図面、今も有効かどうか(経過情報)を確認
ポイントは請求項を読むことです。特許は「請求項に書かれた要件をすべて満たすもの」にだけ効力があります。要件のうち1つでも満たさなければ、文言の上では範囲から外れます。
結果1:カーリー形ネクタイの「形」の特許(特許第7621017号)
一番大きな発見はこれでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ネクタイ及びタイラバ |
| 特許権者 | 有限会社喜樂 |
| 出願 | 2024年2月(優先日 2023年3月) |
| 登録 | 2025年1月16日 |
請求項1を、かみ砕いて書くとこうなります。
- 弾性があり、厚みが均一なネクタイ
- ハリス側に取り付ける部分がある
- 胴体(ボディ)の片側の縁はほぼ真っすぐ、反対側の縁は山のように膨らんでいる
- しっぽ(テール)は、その2本の縁がそれぞれ螺旋状に延びてできている
- 山の膨らむ向きと、螺旋が巻く向きが逆
- テールは先に行くほど細くなる
つまり、「片側にぽこっと膨らんだ胴体から、反対向きにくるっと巻く先細りのしっぽ」という形です。シリコンシートを型で抜けば厚みは均一になるので、自作でシートから切り出す方法は要件1に当たる点にも注意が必要です。
逆に言えば、たとえば膨らみがなく幅がほぼ一定のカーリーは要件3・5を満たさないので、文言の上ではこの特許から外れる方向です(ただし、後で書く出願中のものがあります)。
結果2:テールが複数あるネクタイ(特許第7760178号)
同じ会社の、もう1件の登録特許です(2025年10月17日登録)。
- 胴体の先から複数のテールが分かれていて、それぞれの形が違う(幅や長さが違う)
テールが1本なら関係ありません。2本テール(いわゆる「W」)にする場合は、2本が同じ形かどうかがポイントになります。
結果3:まだ権利になっていない「出願中」のもの
同じ会社は、最初の出願から分割出願(1つの出願から別の範囲で出し直す制度)を続けていて、2026年10月時点で次のようなものが審査中・審判中でした。
| 公開番号 | 状態 | 中身(ざっくり) |
|---|---|---|
| 特開2025-039858 | 拒絶査定不服審判中 | 胴体の片側の縁に膨らみがあるネクタイ(結果1より広い) |
| 特開2025-032033 | 拒絶査定不服審判中 | 取り付け部がT字・錨形・鉤形に横へ張り出している |
| 特開2026-152870 | 審査請求前 | 胴体の幅が一定で、テールが湾曲しているネクタイ |
出願中のものはまだ権利ではありません。ただ、登録されれば範囲が広がるので、ネクタイを作る側としては経過を見ておく必要があります。
ちなみに、幅が一定のカーリーやT字の取り付け部は昔から市販品で見かける形なので、審査でどう判断されるかも気になるところです。
結果4:実用新案(大手メーカー・個人も)
実用新案は、特許庁が中身を審査せずに登録する権利です(有効かどうかは別途争われうる)。ネクタイ関係では、こんなものがありました。
| 番号 | 権利者 | 中身(ざっくり) |
|---|---|---|
| 実用新案登録第3241289号 | がまかつ | 長さ方向に厚さが違う部分があり、その間で厚さが連続して変わる |
| 実用新案登録第3220614号 | ヤマリア | 長さ方向にミシン目が入っている |
| 実用新案登録第3241302号 | 個人 | 2つの部分の間にくびれがある |
| 実用新案登録第3253282号 | 下元企画 | 湾曲したネクタイの表面に線状の凸が複数ある |
厚み・ミシン目・くびれ・表面の凸と、どれも「ちょっとした工夫」に権利があるのが印象的でした。
意匠(デザイン)はどうだった?
意匠登録も調べましたが、カーリー形のネクタイそのものの登録意匠は見つかりませんでした(2026年10月時点、私の検索の範囲で)。見つかったのは、ルアーのテール部やスカートの意匠でした。
調べて分かったこと
一番驚いたのは、有名なメーカーから、名前もよく知らなかったメーカーまで、本当にいろいろなところが知恵を絞ってネクタイを開発していることです。ただのシリコンの切れ端に見えるネクタイにも、形・厚み・切れ込み・表面の凹凸と、工夫の数だけ権利がありました。
- タイラバのネクタイは、「形」そのものに特許がある。しかも大手ではなく、タイラバに特化した会社が取っている
- 特許は請求項の要件を全部満たして初めて範囲に入る。だから「どこが要件か」を読めば、どう避けるかの方向も見えてくる
- 「特許申請中」の表示がある商品は、出願中(まだ権利なし)のことも、すでに登録済みのこともある。番号が分かれば J-PlatPat で今の状態を確認できる
これからどうするか
調べた結果、自作ネクタイの形を見直すことにしました。
請求項の要件を1つずつ読んでいけば、どこを変えれば範囲から外れるのか、方向は見えてきます。販売する前には、専門家にも確認するつもりです。
自分で使う分には気にせず楽しんでいいと思います。ただ、売ろうと考えているなら少し気を付けて。 作る前に J-PlatPat で一度調べておくだけでも、後で困ることを減らせるはずです。
同じように自作に取り組んだ記録として、アシストフックを自作して市販品と比べた記事もあります。


参考
- J-PlatPat(特許情報プラットフォーム):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
- 記事中の特許・実用新案の内容は、2026年10月9日時点の J-PlatPat の公報・経過情報によります

