明石周辺のタイラバで、肉厚のビッグネクタイが広まった理由を、遊漁船・メーカー・釣り人の発信から調べました。結論から言うと、多かった説明は「強い波動で魚にアピールする」「速い潮や早巻きでも伸びきらずに動く」の2つです。ただし、厚くて大きいネクタイに魚がよく反応することを直接確かめた研究は、私の調べた範囲では見つかりませんでした。

2026年11月7日時点で、公開されているWebページを調べた結果です。確認できた発信は十数件で、統計ではありません。船長本人が流行の理由を語った発言は、今回は見つけられませんでした。
結論
- 流行は実際にあったと考えられる:高松や明石で広まり、2022年夏以降に全国へ広がったという説明がある。ただし発信元は、ネクタイを売る側や遊漁船が中心
- 厚みの理由として多かった説明:水を押す力が強い、速い潮でも伸びきらずに動く
- 物理の面:私の計算でも、厚いほど水を押す力は大きくなった。ただし伸び方の差は小さかった
- 魚の面:動くものにマダイが強く反応するという実験はあるが、厚みや大きさは調べていない
- 例外:小さいネクタイのほうが良かった例、薄くて細いほうが有利という意見もある
流行はいつ、どこから始まったのか
紀北の遊漁船の解説では、ビッグネクタイの流れは「高松や明石エリアで発祥」して全国に広まったとされています。高松の遊漁船の船長が監修したネクタイを、2022年夏以降の流れを牽引した存在として紹介していました(2024年6月の解説)。
明石では、数年前まで考え方が逆だったようです。明石で釣っている方のブログには、以前は「細いネクタイじゃないと食わない」と言う船長もいて、今は「強波動とか極厚」の時代になった、と書かれていました(2024年5月の記事)。
明石には、船宿の受付でオリジナルのビッグネクタイを売っている例もあります。
一方で、「大阪湾の船の何割が使っている」といった数字は見つかりませんでした。また、大阪湾全体で流行しているのかは、今回の調査では確かめられていません。
「ビッグ」と「肉厚」は別の話
調べていて気づいたのは、この2つが混ざって語られていることです。
| 意味 | 確認できた例 | |
|---|---|---|
| ビッグ | 全長や幅が大きい | 明確な定義はなく、全長20cm超や幅広が目安、通常は10〜15cmという説明がある |
| 肉厚 | シートが厚い | 市販品で0.6〜1.0mmという紹介や、実測1.2mmという記録がある |
厚さの数字は、メーカー表記や個人の測定、目測が混ざっているので参考値です。大きくて厚いネクタイで釣れたとしても、大きさと厚みのどちらが効いたのかは、それだけでは分かりません。
理由として挙げられていること
1. 強い波動でアピールする
いちばん多かった説明です。メーカーの解説では、生地が厚いと「周囲の水をかき回す力が増加します」とされています。明石で自作ネクタイを使っている方も、分厚いほうが水を押し分ける力が強くなり、波動が強くなると書いていました。
ただし、これは「水が動く」という話です。その波動でマダイが寄ってくるのかまでは、どの発信でも実験では示されていませんでした。
2. 速い潮や早巻きでも伸びきらない
明石は潮の速い場所です。海上保安庁の発表資料には、明石海峡は「最強で7ノットを超える」潮流が発生するとあります。これは海峡の最強の流速で、タイラバをする場所の流速とは別です。
釣り人の解説には、薄いネクタイは強い潮で「ビヨンビヨンに伸ばされて」棒のように動くだけになり、厚いネクタイは強い流れでも正しくなびくとありました。この方は、厚さ1mmのネクタイの出番を、自分の経験として明石では1.5ノット以上としています。
私自身の経験とも同じ向きです。淡路島の遊漁船で、自作の薄いネクタイより市販の肉厚なネクタイのほうが、海面で見てゆっくり泳ぎ、水をつかんでいて、釣果も上でした。ただ、このときは厚み以外の条件も違っていたので、厚みが原因とは言い切れません。
3. その他の説明
根拠はさらに弱くなりますが、次のような説明もありました。
- 大型が釣れやすい:大きなルアーで大型が釣れやすくなることがあるというメーカーの説明。サイズの統計は示されていません
- 深場や濁りで効く:深場や濁りでは波動のアピールが武器になるという解説。明石〜淡路沖の濁りの数値は確認できませんでした
- 手元に動きが伝わる:巻き抵抗が強くなり、動いていることを感じ取れるというメーカーの説明
- 絡みにくく、破れにくい:張りが出てフック絡みが減り、かじられても破れにくいというメーカーの説明。釣果とは別の、使いやすさの理由です
私の計算と照らし合わせる
同じ形で厚さと速さを変えた簡易シミュレーションの結果と比べました。渦を計算していない簡易モデルで、水槽での実測もまだです。比べられるのは厚さ0.6〜1.0mmの違いだけで、長さの違いは計算していません。
| 現場の説明 | 計算の結果(厚さ0.6mm→1.0mm) | 判定 |
|---|---|---|
| 厚いほど水を押す | 1.5ノットで、水を押す力の変動が約1.7倍 | 同じ向き |
| 厚いと巻き抵抗が増える | 1.5ノットで、約4.1gf→約6.4gf(ネクタイ1本分) | 同じ向き。手元で分かる差かは未確認 |
| 薄いと速い潮で伸びきる | 1.5ノットで、流れ方向の伸びが162mm→154mm。1.0mmでも4ノットで168mm | 向きは同じだが差は小さい |
| 薄いと立ち上がりが良い | 0.5ノットで、動き出しは0.6mmが1秒弱、1.0mmが約4秒 | 同じ向き |
「伸びきって棒のようになる」様子は、今回の計算では再現していません。0.6mmは1.5ノットまでしか計算できていませんが、そこでも先端は平均約29mm振れていました。0.6mmより薄いネクタイや2ノット以上の0.6mmは未計算なので、そこで伸びきるかどうかは分かりません。

魚の側は、確かめられていない
動きの効果については、研究があります。水槽の実験で、物を動かしたほうが静止させた場合より、マダイの摂餌行動を有意に強く誘発しました(日本水産学会誌、2013年)。
ただし、これは「動くものに反応する」という実験です。ネクタイの厚みや大きさを比べたものではありません。厚くて大きいネクタイに魚がよく反応すること、側線で波動を感じて寄ってくることを、直接確かめた研究は今回見つかりませんでした。私が日本語を中心に調べた範囲の話で、研究がないと言い切るものではありません。
例外と反対の意見
「厚くて大きいほうが常に良い」とは、調べた発信のどれも言っていませんでした。
- 小さいネクタイが当たった日:明石の船の乗船記(2023年10月)では、他の乗船者は小さいネクタイで当たり連発、ビッグネクタイはアタリがあっても乗らなかったそうです
- スリムが好調だった日:明石沖の釣具店スタッフの釣果(2022年4月)では、スリムなシルエットのネクタイが良いと評価されていました
- ベタ底は薄く細く:巻き上げが2m前後の釣りなら、細くて薄いほうが着底してすぐ動くので有利という意見があります
- 速い潮で細身を使う人も:同じ方は、2ノットを超えるときは細身の自作、1.5ノットぐらいの緩いときは大きなネクタイと使い分けているそうです。「速い潮なら大きく」とは逆の運用です。細いことと薄いことは別なので、上の「伸びきらない」という説明とは矛盾しないかもしれません
- 産卵期や状況による:メーカー自身も、産卵期は小さく細いものが一般的で、ビッグネクタイに反応しない状況もあると書いています
- 地域による:紀北の遊漁船は、紀北の釣果情報ではビッグネクタイの釣果が特別多いとは言えないとしつつ、有効だと考えて使う価値はあると結論づけています
「流行に過ぎない」とはっきり書いた発言は見つかりませんでした。近いものは、よく売れているネクタイは、優秀というより今流行しているネクタイだという見方です。
私の見方
ここからは調査結果ではなく、私の推測です。
肉厚のビッグネクタイが広まったのは、明石のような潮の速い海で動きを保ちやすいという物理的な理由があり、そこに実績のある船やメーカーの発信が重なったからではないかと思っています。使う人が増えれば、そのネクタイでの釣果報告も増えます。釣果報告の多さだけでは、ネクタイの性能なのか、使う人が多いからなのかを区別できません。
なので、「肉厚で大きいほうが釣れる」とは言えません。今のところ言えるのは、「潮が速いほど、厚いネクタイを選ぶ理由はありそう。ただし、小さく細いネクタイも外せない」くらいです。
参考にした情報
- 明石海峡の潮流に関する研究発表(海上保安庁、2014年)
- 動きのある物標による視覚刺激がマダイの摂餌行動に与える誘発効果(日本水産学会誌79巻2号、2013年)
- そのほか、本文中のリンク先の遊漁船・メーカー・釣り人の発信。内容は2026年11月7日に確認しました
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